産業廃棄物のがれき類とは?区別するポイントや具体例も解説

産業廃棄物のがれき類

産業廃棄物は、廃棄物処理法によって20種類に分類されています。内、ひとつががれき類です。主にコンクリート片やアスファルト片などが該当しますが、排出元や形状・含有物質によっては別の品目に該当するケースもあります。今回は、がれき類の定義や他の品目と区別する際のポイントを解説するため、判断がむずかしい場合や産業廃棄物について知識を深めたい場合の参考にしてください。

目次

がれき類とは

がれき類とは、廃棄物処理法で規定されている「工作物の新築、改築又は除去に伴って生じたコンクリートの破片その他これに類する不要物」の通称です。たとえば、住宅やビルの建物を建てたり壊したりした際に生じたコンクリートやアスファルトの破片が該当します。全20品目ある産業廃棄物のなかでも排出量は多く、令和元年度において再生利用率96%を記録した品目です。また、コンクリートやアスファルトの破片を指すことが多いことから、「コンクリートがら」と呼ばれることもあります。

参考:環境省/産業廃棄物の排出・処理状況等(令和元年度実績)

混同されやすい「コンクリートくず」との違い

がれき類と混同されやすい品目として、コンクリートくずがあげられます。コンクリートくずとは、廃棄物処理法で規定されている「ガラスくず、コンクリートくず及び陶磁器くず」と呼ばれる品目に該当する、コンクリートやアスファルトの破片のことです。がれき類と同じ、コンクリートやアスファルトの破片が含まれていることから、区別が難しい傾向にあります。がれき類とコンクリートくずを区別するうえでのポイントは、「工作物を新築・改築・除去したことで生じたかどうか」です。判断に迷った場合は、まずは以下を基準に区別するとよいでしょう。

・がれき類(コンクリートがら):工作物の建築工事で発生したコンクリート片など
・コンクリートくず:上記以外の、製品の製造工程などで発生したコンクリート片など

どのような物から発生した産業廃棄物であるかを基準に考えると、がれき類とコンクリートくずの区別ができます。とはいえ、すべての場合に該当するわけではなく、あくまでひとつの判断基準であることを留意しておかなければなりません。

がれき類かどうかの判断が難しい産業廃棄物の具体例

産業廃棄物の区別は複雑です。たとえば、コンクリート片であったとしても「ガラスくず、コンクリートくず及び陶磁器くず」に該当するケースや、含まれている成分・形状で別の品目に該当するケースもあります。正しく区別するためにも、判断が難しい具体例を知って理解を深めるとよいでしょう。

製造業者が排出したコンクリート片

製造業者が排出したコンクリート片は、産業廃棄物の品目では「ガラスくず、コンクリートくず及び陶磁器くず」に該当します。工作物を新築・改築・除去することで発生したコンクリート片ではないため、「がれき類」ではないと判断するとよいです。

建築業者が排出したコンクリートをはじめとする廃材を含む泥

建築業者が排出したコンクリートをはじめとする廃材を含む泥は、産業廃棄物の品目では「汚泥」に該当します。含水量が高く粒子が微細である場合、たとえ工作物の建築時に発生したとしても「がれき類」には分類されません。また、泥に固形物が混ざっている際は、「汚泥」と「がれき類」にそれぞれを分類します。

石材製造業者が排出したコンクリート片や石片

石材製造業者が排出したコンクリート片や石片は、産業廃棄物の品目では「ガラスくず、コンクリートくず及び陶磁器くず」に該当します。石材製造業は、工作物の新築・改築・除去とは異なる事業であるためです。従って、「がれき類」には分類されません。

建築現場から排出されたアスファルト防水やアスファルト乳剤

建築現場から排出されたアスファルト防水やアスファルト乳剤は、産業廃棄物の品目では「廃油」に該当します。アスファルト防水やアスファルト乳剤は、アスファルト表面で使用されることのある固形油の産業廃棄物としてみなされるためです。アスファルトと名のつく品目であっても、「がれき類」や「ガラスくず、コンクリートくず及び陶磁器くず」に該当しないケースがあることを理解しておきましょう。

地盤改良工事で排出されたアルカリ性のかす

地盤改良工事で排出されたアルカリ性のかすは、産業廃棄物の品目では「汚泥」または「廃アルカリ」に該当します。判断基準は以下のとおりです。

・地盤改良工事は工作物の建築を目的とした工事
・かすは泥に近い形状である

この時点では、「汚泥」に分類されますが、今回のポイントはアルカリ性をもっている点です。腐食性を有するpH12.5以上のアルカリ性がある場合は、特別管理産業廃棄物である「廃アルカリ」に分類されます。従って、pHの数値などを確認したうえで、「汚泥」または「廃アルカリ」に分類することが求められます。

参考:環境省/特別管理廃棄物規制の概要

採石場から排出された不要な岩石

採石場から排出された不要な岩石は、産業廃棄物の品目では「鉱さい」に該当します。採石場での作業は工作物に該当しないため「ガラスくず、コンクリートくず及び陶磁器くず」であると判断される傾向にありますが、鉱物精錬の際に排出される不純物であることから「鉱さい」への分類が正しいです。つまり、今回の判断ポイントは工作物であるかに加え、ほかの産業廃棄物の品目の定義も理解している点にあるといえます。

線路の砂利

線路の砂利は、産業廃棄物の品目では「がれき類」に分類されます。線路は工作物であり、線路に敷いてある砂利も線路や鉄道を構成する一部としてみなされるためです。

がれき類の処理方法とは

産業廃棄物として収集されたがれき類の9割以上が再生利用され、残りの1割未満は最終処分場にて埋め立て処分されます。再生利用される際は、重機などによって破砕されたり磁力選別機によって鉄くずや金属類などの不要物が除去されたりしたうえで、求められる規格に適した粒度や強度に合うように加工されることが一般的です。代表的な再生利用先として以下があげられます。

・再生路盤材:道路舗装の基礎
・再生砕石(リサイクル砲石):家などの建築物を建てる際の基礎
・合材、再生骨材:コンクリートやアスファルトの原料

再生路盤材では40mmほどの砂利状に細かく破砕処理され、合材・再生骨材では破砕したうえで熱加工されたのちに再利用されます。いずれも、工作物を新築・改築・除去したことで生じた産業廃棄物が工作物の建築時に再利用されるといえるため、上手く循環していると考えてよいでしょう。

まとめ

がれき類は、産業廃棄物のなかでも排出量が多い品目のひとつです。取り扱う業者も多いですが、紹介した事例のように品目の区別が難しいケースがあります。不適切な判断による事業停止などの行政処分を避けるためにも、品目の区別などに悩んだ際は無理に結論づけず自治体に相談するとよいでしょう。

目次