産廃業許可の更新の注意点とは?手続きの手順や必要書類を解説

産廃業許可の更新の注意点

産業廃棄物収集運搬業許可証や産業廃棄物処理業許可証には有効期間が定められているため、有効期間内で更新手続きを行わなければなりません。ただし、更新手続きには注意すべき点も多く、場合によっては更新できないまま許可を失効してしまうケースもあります。今回は、産廃業許可の更新手続きの手順や注意点だけでなく、有効期間が過ぎてしまった場合に起こる事柄も解説しているため、更新を控えている人だけでなく産廃業許可についての知識を深めたい人も参考にしてください。

目次

産廃業許可の更新とは

産廃業許可には、5年の有効期間が定められています。有効期間の満了後も事業を継続させたい場合は、有効期間内に更新手続き(更新申請)を行わなければなりません。有効期間を1日でも過ぎてしまうと、更新することができなくなり営業も禁じられてしまうため、以下の点に注意して有効期間内での更新を行うようにしましょう。

・更新手続きの受付開始日や更新手続きに必要な書類は各自治体で異なる
・更新手続きには、新規申請と同じように講習会を受講する必要がある
・更新申請後、許可証の交付には2か月程度時間がかかる
・更新手続きは却下される可能性がある

更新手続きには必要な書類も多いです。そのため、余裕をもって更新手続きの準備を進めていくことをおすすめします。

有効期間内に更新手続き行えば効力は継続される

廃棄物処理法14条第3項・第8項によって、有効期間内に更新手続きを行っていれば、更新許可もしくは不許可の判断がされるまで許可証の効力が継続されることが認められています。従って、新しい許可証の交付を待っている間に有効期間が切れてしまった場合でも、継続して営業することが可能です。とはいえ、以下のリスクがあることは理解しておく必要があります。

・不許可の判断がされた場合、その時点で営業することは禁じられる
・更新手続きの処分待ちであることの証明が求められるケースがある

産廃業許可証の提示が求められた際、有効期間が切れている許可証を提出することになります。更新手続きの処分を待っていることの証明が求められるケースも考えられるため、自治体が更新手続きを受理した日付が分かる書類などを用意しておくとよいです。

参考:廃棄物処理法

更新手続きについての注意点

産廃業許可の更新手続きは、新規申請時と同じように厳しい審査が行われます。更新手続きの前には、窓口で必要な書類を確認するなどして不備のないように準備するとよいです。あわせて以下の注意点をふまえ、予期せぬトラブルを防ぎスムーズな更新手続きを行いましょう。

更新手続きが却下されるケースもある

新規申請時と同じく、更新申請も必ず許可されるわけではありません。以下の欠格事由に申請者が該当する、もしくは該当する人物が役員にいる場合は、却下される可能性が高いため注意が必要です。

・成年被後見人、被保佐人、破産者で復権を得ない者
・禁固以上の刑に処され、執行を受けることがなくなった日から5年経過しない者
・廃棄物処理法などに違反し、執行を受けることがなくなった日から5年経過しない者
・暴力団に所属する者、または暴力団員でなくなった日から5年経過しない者
・業務に対して不誠実な行為をする恐れがあると認める理由がある者

また、経理的基礎などに問題があると判断された事業や、変更届けを提出していない事業なども更新手続きが却下される恐れがあります。却下されないためにも、窓口にて申請内容の確認や相談などを行ってから申請するとよいでしょう。

事業を行う全ての自治体で更新手続きをしなければならない

産廃業許可を更新する際は、新規許可申請時と同じく、事業を行うすべての自治体で更新手続きを行わなければなりません。たとえば産業廃棄物収集運搬業許可の場合、産業廃棄物を積み込む自治体と降ろす自治体の両方での手続きが必要です。自治体によって求められる書類は異なるため、事前に必要書類を確認しておくことをおすすめします。

産廃業許可の有効期間が切れた場合に起こること

更新手続きを行わないまま産廃業許可証の有効期間が切れてしまったり、申請却下などを理由に有効期間内に更新できなかったりすると、以下のデメリットが生じます。よほどの理由がない限りは、できる限り有効期間内で更新手続きを行っておくとよいでしょう。

無許可業者として扱われる

有効期間内に更新手続きを行わなかった場合、有効期間満了日の翌日以降における該当事業の運営が禁じられます。たとえ1日であっても有効期間が過ぎていれば無許可業者として扱われるため、速やかに事業を停止して許可証の申請手続きを行わなければなりません。万一、営業してしまった場合は、5年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金または併科されたり、産廃業許可を一定期間取得できなくなる処分が下されたりするので注意が必要です。また、無許可業者に依頼した側の責任が問われるケースもあるため、刑罰にくわえて取引先との損害賠償トラブルに発展する恐れも考えられます。

許可証を再取得する際は新規許可申請で取得しなければならない

有効期間を過ぎた場合、更新申請は行うことができないため「新規許可申請」で産廃業許可証の再取得を行わなければなりません。新規許可申請では、更新許可申請と比較して以下の違いが生じます。

・手続きかかる出費が10,000円から50,000円程度増える
・講習会の受講にかかる時間が10時間以上、もしくは2日以上長くなる
・手続きに必要な書類が増加する

さらに、新規許可申請で新たに産廃業許可証を取得した場合、従来の許可番号とは異なる許可番号が交付されます。許可番号が変わることで、取引先に新しい許可番号を通知したりホームページや名刺などの情報を修正したりするなどの手間がかかる可能性も考えられるため、あわせて注意が必要です。

産廃業許可の更新手続きの流れ

産廃業許可の更新手続きには、更新費用として90,000円以上必要です。また、許可証の交付には申請から2か月程かかることから、更新手続きには時間・手間・費用がかかるといえます。更新手続きの流れを把握し、余裕をもったスケジュールで動きましょう。

講習会を受講する

産廃業許可の更新手続きには、日本産業廃棄物処理振興センターの「処理業(更新)講習会」を受講する必要があります。講習会には以下の3種類あるため、自身の取得している産廃業許可に適した講習会を選択しましょう。(2023年1月時点)

・産業廃棄物または特別管理産廃物の収集・運搬過程:16,500円(ネット割引価格)
・産業廃棄物または特別管理廃棄物の処分過程:20,900円(ネット割引価格)
・上記の同時受講:33,000円(ネット割引価格)

新規申請時と同じように修了試験が実施されます。修了試験は○×問題か択一問題であり、総得点が満点の70%に達していることが合格の条件です。また、講習会を受講する際は、以下の点をふまえたうえで申し込むことをおすすめします。

・修了証は、修了試験を受けてから約2週間後に届く
・講習会の実施回数や定員数は地域によって異なる
・修了証の有効期間は2年
・一枚の修了証で複数の自治体への更新手続きが可能

産廃業許可の有効期間が目前である場合、希望する受講日に空きがなかったり修了証の到着が間に合わなかったりする恐れがあります。修了証の有効期間は2年であるため、余裕をもって受講するとよいでしょう。

必要書類を集める

新規許可申請時と比較すると、必要な書類量はやや少ないです。とはいえ、多くの書類が必要であることには変わりありません。自治体によって必要書類が異なるケースがあるため、事前に問い合わせたり確認したりすることをおすすめします。以下は代表的な必要書類です。

法人の場合に必要な書類

・産廃業許可申請書
・現許可証の写し
・定款の写し
・履歴事項全部証明書
・役員及び出資者の住民票の写し
・役員及び出資者の登記されていないことの証明書
・誓約書
・講習会の修了証の写し
・事業の資金総額や資金の調達方法を記載した書類
・直近3年分の貸借対照表、損益計算書、株式資本等変動計算書及び個別注記表
・法人税の納税証明書

個人の場合に必要な書類

・産廃業許可申請書
・現許可証の写し
・住民票の写し
・登記されていないことの証明書
・誓約書
・講習会の修了証の写し
・事業の資金総額や資金の調達方法を記載した書類
・直近3年分の納税証明書
・残高証明書、固定資産評価証明書などの資産に関する書類

変更すべき事項がある場合は、変更事項確認書も提出します。とはいえ本来であれば、変更事項ができた時点で変更届を提出しておくものです。こまめに変更届を提出するなどして、更新手続き時に変更事項確認書を提出することがないようにしておきましょう。

各自治体で更新手続きを行う

すべての必要書類を揃えたあとは、産廃業許可の有効期間までに各自治体で更新手続きを行います。手続き時には、申請手数料として以下が必要です。(2023年1月時点)

・産業廃棄物収集運搬業:73,000円
・特別管理産業廃棄物収集運搬業:74,000円
・産業廃棄物処分業:94,000円
・特別管理産業廃棄物処分業:95,000円

更新手続きの受付開始日は各自治体で異なりますが、有効期間の2か月前から3か月前であることが一般的です。

新しい産廃業許可証の交付もしくは申請却下

申請から2か月ほどで審査結果がでます。申請が通れば産廃業許可証が交付されますが、申請内容に不備があった場合は申請が却下されるため改めて申請しなければなりません。また、新しく交付される産廃業許可証には以下の特徴があります。

・新しい産廃業許可証の有効期間は、古い許可証の有効期間の翌日から起算
・許可番号は従来と同じ

新しい許可証が交付された際は、速やかに古い産廃業許可証と差し替えるようにします。

まとめ

産廃業許可証の有効期間内に更新手続きが行えなかった場合、事業の経済活動に大きな支障を及ぼします。とくに講習会は地域によって実施回数が異なるだけでなく、修了証の発行までに2週間ほどの日数が必要です。経済活動を停止させたり取引先に迷惑を掛けたりしないためにも、紹介した更新手続きをふまえたうえで、余裕をもったスケジュール管理を行うことをおすすめします。

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