産廃業許可の代行申請|行政書士に依頼するメリット・デメリット・注意点は?

産廃業許可の代行申請|行政書士

行政書士は、行政への許認可申請にかかわる書類の入手・作成や、書類に関する相談業務を行う国家資格者です。産廃業許可の代行申請を依頼することができる専門家の一人であり、申請にかかる時間や労力を削減したい人にとっての頼もしい存在ともいえます。一方で、報酬額がかかることから依頼するかどうかを悩む人も多いです。今回は、行政書士に依頼するメリットとデメリットにくわえ、依頼する際の注意点や判断ポイントを解説します。産廃業許可の代行申請を行政書士へ依頼するかどうかを悩んでいる人は、ぜひ参考にしてください。

目次

依頼前に理解しておくべき産廃業許可の注意点

産廃業許可の申請を行政書士に依頼するか、もしくは自身で行うかを判断する前に、産廃業許可の注意点をおさえておくことをおすすめします。注意点を理解していないまま申請を進めてしまうと、場合によっては行政書士から追加費用を請求されたり事業内容に適していない手続きを行ってしまったりする恐れがあるためです。産廃業許可の注意点を理解し、後悔しない選択につなげましょう。

複数の自治体で申請が必要となるケースがある

業務内容によっては、複数の自治体で産廃業許可の申請を行う必要があります。さらには、自治体ごとで必要な要件や手続き方法が異なっているケースも多いです。まずは自身の希望する業務内容を整理したうえで、複数の自治体への申請が必要となるかどうかを把握するようにします。誤った認識は、手続きの不備の原因になったり正確な見積もりが得られなかったりするため注意が必要です。

産廃業許可には5年の有効期間が設けられている

有効期間の満了後も事業を継続させる場合、更新手続きを行う必要があります。更新手続きとはいえ、新規手続きとほぼ同じ書類量と申請手数料が必要です。優良認定業者として認定されると有効期間は7年に延長されますが、定期的に更新手続きを行わなければならない点を理解しておきましょう。

申請しても必ず許可が得られるわけではない

書類不備がない場合でも、許可申請が却下される可能性があります。たとえば、自治体が設けた条件を満たしていなかったり事業計画が不十分だとみなされたりなど、簡単に改善できる内容から時間がかかる内容までさまざまです。許可を得るためには、各自治体に相談しながら申請準備を進める必要があります。

登記事項を変更する場合は変更手続きが必要

登録された事項を変更する場合、変更許可申請を行わなければなりません。たとえば、取り扱う産業廃棄物の品目や使用する車両を変更・増減させることが該当し、変更申請手続きには71,000円以上かかります。(2023年1月時点)変更手続きの負担を抑えるためにも、許可申請手続を進める前にしっかりと事業計画を練ることが大切です。

行政書士に産廃業許可の申請手続きを依頼するメリット

産廃業許可の代行申請を行政書士へ依頼するメリットとして、時間や労力を削減できる点が取り上げられることが多いです。しかし実際に得られるメリットは豊富であり、一度許可申請を却下された人にもおすすめできます。

申請にかける時間や労力を削減できる

行政書士に依頼すれば、産廃業許可の申請に必要な以下の工程を代行してもらえます。

・役所での証明書の取得
・必要書類の作成
・役所との打ち合わせ

証明書の取得や打ち合わせなどは、基本的に窓口が営業している平日9時から17時の間に行わなければなりません。また、自治体から申請書や事業計画などの補正を求められる可能性があるため、複数回にわたって役所を訪れなければならないケースもあります。行政書士に依頼すれば、これらの時間の確保や労力を削減することが可能となるだけでなく、削減できた時間をほかの業務に割り当てることも可能となるのです。

最短での「申請が通りやすい申請書類の作成」が期待できる

申請する自治体での実績がある行政書士に依頼することで、最短での許可取得が期待できます。実績のある行政書士はすでに申請に関するテンプレートや、効率よく申請手続きを進められるマニュアルを保有していることが多いです。さらに、自治体独自の要件を理解している可能性も高いため、許可取得の可能性が高い申請書類をスピーディに作成してもらうことが期待できるといえます。

他県や遠方の申請を任せることができる

追加費用が発生するケースが大半ですが、複数の自治体への代行申請も依頼可能です。産廃業許可は自治体によって独自のルールが設けられており、申請方法もそれぞれ異なります。なかには窓口での申請が必須である自治体もあるため、行政書士に依頼することで手続きに関する負担を大幅に削減することができるでしょう。

申請書類に関する相談ができる

司法書士の主な仕事のひとつとして、相談業務があげられます。たとえば事業計画を話すことで、申請書類の作成において不十分である点を指摘してくれたり、事業計画に応じた申請内容を提示してもらえたりすることが可能です。なかには、行政書士に相談するまで申請する産業廃棄物の品目を誤って認識していたというケースもあります。自身の事業計画に応じた申請書類を理解するうえでも、行政書士への相談は有効です。

アフターサービスを受けられることがある

産廃業許可の代行申請を依頼できる行政書士のなかには、更新許可申請や変更許可申請を割引価格で依頼できるアフターサービスを提供しているところもあります。とくに、5年に一度のペースで行わなければならない更新許可申請は、以下の点から注意が必要です。

・更新手続き中であっても、有効期間が過ぎた営業は無許可営業となる
・無許可営業は、5年以下の懲役または1,000万円の罰金もしくは併科
・無許可営業は依頼した側にも責任が問われるため、損害賠償問題に発展する恐れがある
・有効期間切れ後の申請は、新規申請扱いとなり金銭的負担が大きい

更新許可申請が行える期間は自治体によって異なるものの、有効期間の2か月前から3か月前であることが一般的です。申請から許可証の発行までに2週間以上かかったり、更新のための講習会を受けたりする必要があるため、ややタイトなスケジュールだといえます。つまり、アフターサービスとして更新許可の代行申請を前もって依頼しておくことで、書類作成などの手間を削減するだけでなく、専門家による余裕をもったスケジュール管理も期待することが可能です。

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行政書士に産廃業許可の申請手続きを依頼するデメリット

行政書士は、行政への許認可申請が必要となる場合に必要な書類の作成・取得したり書類に関する相談業務を行ったりする専門家です。前述したとおり、産廃業許可の申請手続きにおいて頼もしい存在である一方、以下のようなデメリットももちあわせています。

金銭的負担がかかる

行政書士に依頼した際、依頼料がかかります。以下は、日本行政書士会連合会が発表した「令和2年度報酬額統計調査の結果」による報酬額の平均です。

・産業廃棄物収集運搬業許可(積替え保管なし):平均11万円
・産業廃棄物収集運搬業許可(積替え保管あり):平均21万円
・産業廃棄物処理業許可:13万円~135万円程度

上記の報酬額にくわえ、行政に支払う申請手数料などが別途必要です。たとえば、産業廃棄物収集運搬業許可を申請する場合、許可申請手数料81,000円や講習会の受講費31,000円、さらには複数の証明書発行費が追加で発生します。(2023年1月時点)また、複数の自治体に申請する場合は報酬額が上乗せされるケースが多いです。決して安い金額とはいえないため、手続き内容を調べてみたり複数の司法書士に相見積もりをしたりして、依頼するかどうかを判断することをおすすめします。

参考:日本行政書士会連合会/令和2年度報酬額統計調査の結果

許可を更新する際、手続きに手間がかかる

行政書士に産廃業許可の代行申請を依頼した場合、具体的な手続きを知らなくても許可証を入手することができます。注意すべきは、産廃業許可証の有効期間は5年であり、事業を継続する場合は更新許可申請の手続きを行う必要がある点です。更新手続きは、新規許可申請の手続きとほぼ同じ手続きを行う必要があります。つまり、手間や負担を省くために新規許可申請の代行を行政書士に依頼したとしても、結局は更新手続き時に手続き方法を調べるなどの手間をかけることになるのです。言い換えれば、新規許可申請を自身で行うことで、更新の際の手間や負担を軽減したり行政書士へ依頼する費用を削減したりできるといえます。

依頼しても自身の手間はゼロにならない

産廃業許可の申請手続きを行政書士に依頼する多くの人は、自身の手間を省くことをメリットとしています。とはいえ、産廃業許可の申請にかかわる工程すべてを行政書士に丸投げできるわけではありません。行政書士は、必要書類を作成したり代理申請したりすることは可能ですが、以下の点を行うことはできません。

・産廃業に関する事業計画を立てる
・日本産業廃棄物処理振興センターの講習会の受講

とくに講習会の受講は、産廃業許可の申請に必須の条件です。受講は、許可申請者本人や事業代表者などに限定されているため、行政書士には依頼できません。講習会は、産業廃棄物収集運搬業許可の場合は2日間、産業廃棄物処理業許可の場合は3日間にわたって実施され、1日あたり6時間ほどかかります。行政書士に依頼したとしても、受講という手間は避けられないと認識しておくとよいです。

行政書士に依頼しても確実に許可が得られるわけではない

行政書士が行える業務は、行政へ提出する書類作成・提出、それに基づく証明書の入手です。代行申請の実績に基づくアドバイスを受けられるケースもありますが、必ず許可が得られるわけではありません。依頼しても申請却下される可能性を理解しておき、申請却下時や再申請をする場合の料金を事前に確認しておくことをおすすめします。

行政書士に依頼するかどうかの判断ポイント

行政書士に依頼すれば、産廃業許可の申請にかかる時間や労力などを削減することができる一方で、自身で手続きをする倍程度の金銭的負担が生じるケースもあります。依頼すべきか悩む場合は、以下のポイントで判断してみるのもひとつの手です。

時間が確保できるか

産廃業許可の手続きは複雑であるため、初めて申請する際はとくに時間がかかるといわれています。以下は行政書士に依頼せずに自身で申請する場合、手続き方法を調べながら行う必要のある内容です。

・役所で証明書を入手する
・必要書類を作成する
・事前相談をはじめとする役所との打ち合わせ
・申請内容や書類の不備による補正対応
・日本産業廃棄物処理振興センターの講習会の受講

申請に必要となる証明書を入手するために、平日に時間を割かなければならないことも考えられます。営業計画をふまえたうえで、手続きの時間が確保できるかどうかを判断しましょう。

申請する自治体の数と申請方法で判断する

産廃業許可は、作業する自治体ごとに申請する必要があります。たとえば産業廃棄物収集運搬業許可の場合、積み込む場所と降ろす場所を管轄する自治体に許可を申請しなければなりません。また、自治体によって申請の受付方法が異なっており、郵送での申請が可能である自治体や予約をしたうえで窓口申請しなければならない自治体もあります。従って、申請する自治体の数と申請方法で行政書士に依頼するかどうかを判断するのもひとつの判断基準です。

まとめ

行政書士に産廃業許可の代行申請を依頼すべきかどうかは、自身の事業計画によって大きく異なるといえます。たとえば、複数の自治体での申請が必要であったり時間が十分に確保できなかったりする場合、行政書士は大きな助けとなるでしょう。とはいえ、行政書士に依頼するからといって丸投げしてはいけません。5年経てば更新手続きを行う必要があるうえ、廃棄物処理法を遵守するためにも申請内容を把握しておくべきです。まずは廃棄物処理法を理解したり事業計画を立てたりすることからはじめて、自身に適した手続き方法を検討しましょう。

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