産業廃棄物収集運搬業許可を詳しく解説|注意点や必要書類も紹介

産業廃棄物収集運搬業許可

不適切な方法で産業廃棄物を取り扱った場合、自然環境や近隣に住む人々に悪影響を及ぼす恐れがあります。とくに事業として産業廃棄物を収集・運搬する際は悪影響を防止するためにも、廃棄物処理法を遵守したり必要な許可である産業廃棄物収集運搬業許可を取得したりしなければなりません。今回は、産業廃棄物収集運搬業許可を申請する前に知っておくべきポイントや、必要な資格・書類などについて解説します。疑問の解消や申請不備を防止するためなどの参考にしてください。

目次

産業廃棄物収集運搬業許可とは

産業廃棄物収集運搬業許可とは、廃棄物処理法によって定められた20種の産業廃棄物を収集・運搬する事業運営を認められた際に交付される許可です。許可を取得せずに営業してしまった場合、5年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金、または併科される恐れがあるため必ず取得してから事業を開始しましょう。また、産業廃棄物収集運搬業許可には以下の特徴があります。

自身の事業で排出した産業廃棄物を運搬する場合は許可不要

産業廃棄物収集運搬業許可はあくまで、産業廃棄物を収集・運搬する事業を運営する際に必要な許可です。従って、金銭が発生しない自社で排出した産業廃棄物を収集・運搬する場合には必要ありません。

一般廃棄物を取り扱う際には別の許可が必要

産業廃棄物の収集・運搬する際に必要な許可が産業廃棄物収集運搬業許可であり、一般廃棄物の収集・運搬には「一般廃棄物収集運搬業許可」が必要です。従って、産業廃棄物と一般廃棄物をしっかりと区別しなければなりません。

産業廃棄物収集運搬業許可では処分に関わる事業は行えない

産業廃棄物収集運搬業許可を取得して行える事業は、産業廃棄物の収集・運搬のみであり処分することはできません。もし金銭を受け取って他事業が排出した産業廃棄物を処分したいのであれば、「産業廃棄物処分業許可」の申請取得が必要です。

取り扱う産業廃棄物によっては異なる許可が必要

産業廃棄物のなかには、特別管理産業廃棄物と呼ばれる品目があります。廃棄物処理法によって定められた「爆発性・毒性・感染症などの人々の健康や生活環境に被害を及ぼす性状をもつ産業廃棄物」が特別管理産業廃棄物に該当し、収集・運搬する際は「特別管理産業廃棄物収集運搬業許可」が必要です。たとえば、以下が特別管理産業廃棄物に該当します。

・廃酸、廃アルカリ、廃水銀等
・感染症産業廃棄物
・PCB汚染物、PCB処理物
・指定下水汚泥

特別管理産業廃棄物は、通常の産業廃棄物よりも厳しい基準での管理が求められます。もし、一般の産業廃棄物と特別管理産業廃棄物の両方を取り扱う事業を運営する場合は、産業廃棄物収集業許可と特別管理産業廃棄物収集業許可の両方の取得が必要です。

産業廃棄物収集運搬業許可を申請する前に知っておくべきポイント

産業廃棄物収集運搬業許可や特別管理産業廃棄物収集運搬業許可を申請するには、いくつかの注意点があります。場合によっては申請手続きが却下されたり、手間や出費が増えたりするため気を付けねばなりません。以下は申請前に知っておくべき事柄です。しっかりと理解したうえで、産業廃棄物収集運搬業許可の申請手続きを進めましょう。

申請する自治体によって必要書類や条件が異なる

産業廃棄物収集運搬業許可を申請するにあたって、申請する自治体ごとに独自のルールが設けられていることを理解しておく必要があります。本記事で紹介している必要書類や条件はあくまで一般的な内容であるため、申請する自治体に相談したり確認したりしたうえで手続き準備を進めるのがおすすめです。

積み場所と降ろし場所になる自治体での申請が必要

産業廃棄物を収集運搬する事業を営む場合は、産業廃棄物の積み場所と降ろし場所を管轄する自治体へ産業廃棄物収集運搬業許可を申請しなければなりません。もし、積み場所と降ろし場所を管轄する自治体が異なる場合は、それぞれの自治体で新規申請をする必要があります。申請費用や申請書類は各自治体で必要となるため、その分費用はかさむことを留意しておくとよいです。

積替え保管ありで申請する場合は事前相談が必須

積替え保管とは、産業廃棄物を積んでから処理場までの間に、別の車に積み替えたり保管したりすることです。車に積んだまま一時保管することも含まれており、処理場に直行しない場合は「積替え保管あり」に該当します。積替え保管は誰にでも許されるわけではなく、以下の条件を満たさなければなりません。

・積替え保管することを申告して産業廃棄物収集運搬業許可を申請
・積替え保管を行いたい場所を管轄する自治体から積替え保管許可を取得

積替え保管ありでの申請は、積替え保管なしでの申請と比較して複雑な申請手続きが必要です。許可条件も自治体ごとで大きく異なるといわれており、申請しても取得できない可能性があります。該当する自治体の窓口に相談しながら事業計画を立てるとよいでしょう。

取扱品目を追加したり運搬車両を変えたりする場合は変更手続きが必要

産業廃棄物収集運搬業許可では該当する事項に変更があった場合、定められた日数のうちに変更手続きを行わなければなりません。万一、変更手続きを怠ってしまった際は30万円以下の罰金が科される恐れがあります。以下は変更手続きが必要な代表的な事柄です。

・申請した所在地の変更
・運搬車両や駐車場の変更や増加減少
・取り扱う産業廃棄物の品目の追加や削除
・産業廃棄物収集運搬業の廃止
・積替え保管ありへの変更
・法人の代表者や役員の変更

また、取扱品目を追加したり積替え保管ありに変更したりする場合は変更手続き費用として、産業廃棄物収集運搬業許可で71,000円、特別管理産業廃棄物収集運搬業許可で72,000円がかかります。手間や出費を抑えるためにも、事業計画をよく練ってから申請しましょう。

有効期間は5年間、以降は更新手続きが必要

産業廃棄物収集運搬業許可には、5年の有効期間があります。満了後も許可を継続させたい場合は、各自治体で更新手続きが必要です。更新手続きは新規許可とほぼ同様であり、以下の費用がかかります。(2023年1月時点)

・産業廃棄物収集運搬業許可の更新手数料:73,000円
・特別管理産業廃棄物収集運搬業許可の更新手数料:74,000円
・収集運搬業許可の講習会の受講費:19,500円(Web申請時19,900円)

※無許可営業に関して削除 有効期間満了後の手続きは新規許可として扱われるため、できるだけ早い更新手続きがおすすめです。

産業廃棄物収集運搬業許可の申請に必要な条件や要件

産業廃棄物収集運搬業許可や特別管理産業廃棄物収集運搬業許可を申請する際は、5つの条件や要件を満たす必要があります。いずれかひとつでも条件を満たしていなかった場合は、申請を却下されたり取得後に許可を取り消されたりする恐れがあるので注意しなければなりません。事前に確認し、条件や要件を満たしたうえで申請します。

講習会を受講し、修了証を所有している

産業廃棄物収集運搬業許可を申請する際、日本産業廃棄物処理振興センターの講習会を受講したことを示す修了証の写しが求められます。講習会は許可の種類に応じて異なるため、以下の講習会から該当する過程を選択して申し込みましょう。

・処理業(新規):産業廃棄物の収集、運搬過程
・処理業(新規):特別管理産業廃棄物の収集、運搬過程

受講対象者は、個人申請の場合は事業主本人もしくは事務所の代表者(政令使用人)、法人申請の場合は法人代表者または監査役を除く役員もしくは事務所の代表者(政令使用人)です。少なくとも1名は講習会を受講したうえで修了証を取得しなければなりません。また、受講するにあたって以下の費用がかかります。(2023年1月時点)

・産業廃棄物収集運搬業許可の受講費:31,000円(Web申請時30,500円)
・特別管理産業廃棄物収集運搬業許可の受講費;47,100円(Web申請46,600円)

産業廃棄物収集運搬業許可の講習会は2日間、特別管理産業廃棄物収集運搬業許可の講習会は3日間にわたって開催され、1日あたり約6時間の受講です。さらに、講習会後には修了試験が実施されます。修了試験は正誤問題(○×問題)、多肢選択問題の2種類であり、合格率は9割程度です。難易度は高くありませんが、しっかりと受講する必要があります。また、あわせて以下の点も留意しておくとよいです。

・講習会の開催頻度や規模は自治体によって異なり、定員数には限りがある
・万一、不合格となった場合は再試験を2回まで受けられる
・修了証には5年の有効期間がある
・修了証は約2週間後に郵送される

講習会の受講を希望してもすぐに受講できない場合があります。さらに、修了証の発行には時間がかかるため、余裕をもって申込むようにしましょう。

経理的基礎を有している

経理的基礎とは、事業を的確かつ継続して行える財産基盤のことです。貸借対照表や納税証明書などを提出することで、経理的基礎を有していることを証明します。ただし、判断基準や必要書類は各自治体によって異なるので事前確認が必要です。場合によっては、申請後に追加書類を求められることもあります。

適切な事業計画を整えている

適切な事業計画を整えていることを証明するために、事業全体の計画書や業務量に応じた施設や人員を整備していることを示した書類が必要です。申請する自治体によって求められる書類は異なりますが、以下のような書類の提出が求められます。

・取り扱う産業廃棄物の種類や、予定する月の運搬量
・予定する運搬先の名称や所在地
・収集方法や運搬車両の詳細
・就業時間や人員数

収集運搬施設がある

収集運搬施設とは、運搬車両・運搬容器・駐車場などのことです。たとえば、自動車検査証や施設使用承諾書などの提出によって収集運搬施設があることを証明します。ほかの要件と同様に各自治体によって必要な書類が異なるため注意が必要です。

欠格事由に該当しない

欠格事由とは、適正な事業が運営できないと判断する要件を表したものです。欠格事由に該当した場合、産業廃棄物収集運搬業許可の取得は認められません。また、許可の取得後に欠格事由に該当してしまった場合は、許可が取り消しされます。以下は、産業廃棄物収集運搬業許可の欠格事由の一部です。

・成年被後見人、非保佐人、破産者で復権を得ない者
・禁固以上の刑の執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者
・許可取消処分を受けた日から5年を経過しない者
・暴力団関係者

対象者は事業主だけでなく、役員・株主・出資者・政令使用人・法定代理人なども含まれます。申請前に欠格事由に該当する者がいないかを確認し、申請却下や許可の取り消し処分とならないように気を付けましょう。

産業廃棄物収集運搬業許可の申請に必要なもの

産業廃棄物収集運搬業許可や特別管理産業廃棄物収集運搬業許可を申請する場合、申請費用といくつかの書類が必要です。申請する自治体によって一部異なる事項があるため、事前に確認しておくことでスムーズに手続きが進められるといえます。

申請に必要な費用

積替え保管なしの産業廃棄物収集運搬業許可と、積替え保管なしの特別管理産業廃棄物収集運搬業許可の取得にかかる費用は以下のとおりです。(2023年1月時点)

・産業廃棄物収集運搬業許可の新規申請手数料:81,000円
・特別管理産業廃棄物収集運搬業許可の新規申請手数料:81,000円
・産業廃棄物収集運搬業許可の受講費:31,000円(Web申請時30,500円)
・特別管理産業廃棄物収集運搬業許可の受講費;47,100円(Web申請46,600円)

ほかに、役所や税務署が発行する証明書の取得費がかかりますが、申請者の状況や申請する自治体によって枚数や証明書が異なります。基本的には、15万円を目安に申請費用を準備しておくとよいです。ただし、産業廃棄物の積み場所と降ろし場所を管轄する自治体が異なる場合は、それぞれの自治体で許可を取得しなければなりません。従って、申請に必要な費用は「申請費用×申請する自治体数」となるので注意しましょう。

申請に必要な書類

産業廃棄物収集運搬業許可の申請に必要な書類は、法人と個人で異なります。申請する自治体や取り扱う産業廃棄物によっても異なるため、あわせて確認が必要です。一般的に必要となる申請書類として以下があげられます。

法人の場合

・産業廃棄物収集運搬業許可申請書
・事業計画書
・役員全員分の住民票
・役員全員分の登記されていないことの証明書
・直近3年分の法人税の納税証明書、貸借対照表、損益計算書
・履歴事項全部証明書
・定款
・講習会修了証
・運搬車両の写真、車検証の写し、駐車場の使用権を証する書類

個人の場合

・事業主の住民票
・事務所の案内図
・事業主の登記事項証明書
・直近3年分の確定申告の写し、所得税の納税証明書
・青色申告の場合は貸借対照表、損益計算書
・白色申請の場合は収支内訳書、金融機関発行の残高証明書、固定資産税評価額等証明書
・講習会修了証
・運搬車両の写真、車検証の写し、駐車場の使用権を証する書類

まとめ

産業廃棄物収集運搬業許可を申請する条件や必要書類などは、申請する自治体によって異なります。とくに産業廃棄物を積む場所と降ろす場所を管轄する自治体が異なる場合は、それぞれに申請する必要があるため手間と費用が必要です。場合によっては、行政書士などの専門家へ代理申請を依頼する手もあります。また、産業廃棄物を取り扱う事業は産業廃棄物収集運搬業許可の取得後も廃棄物処理法を遵守しなければなりません。産業廃棄物の取扱方や申告が必要な事柄をしっかりと理解したうえで、産業廃棄物収集業を運営しましょう。

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