産廃業許可を取得している業者は、いくつかの法律を遵守した営業を行う必要があります。そのひとつが家電リサイクル法です。小売店・製造業者には義務が課され、収集運搬する際は特定の資格を保有していることが求められます。今回は、家電リサイクル法の基礎知識にくわえ、廃家電製品を収集運搬する際に産廃業許可などの資格が必要であるかどうかを解説します。
家電製品の種類と廃棄方法
家電製品とは、電気製品のなかでも家庭で使用することを目的として作られた電気製品を指します。たとえばエアコン・冷蔵庫・掃除機などがあげられ、家庭ではなく事業所で使用された場合でも家電製品と呼ばれることが一般的です。家電製品を廃棄する際は、家電リサイクル法をはじめとする法律の対象であるかどうかを確認したうえで、正しく廃棄処理することが求められます。以下は、廃棄する際で重要となる3つの部類と代表的な廃棄方法をまとめた表です。(※自治体によって一部異なる)
品目 | 対象法律 | 廃棄方法 |
・テレビ(ブラウン管、液晶、プラズマ) ・エアコン ・冷蔵庫(冷凍庫) ・洗濯機(衣類乾燥機) | 家電リサイクル法 ※家庭用に限る | 家庭用 ・小売店へ引き取りを依頼 ・自治体の案内に従う |
業務用 ・指定取引場所へ持ち込み ・小売店へ引き取りを依頼 ・産廃業許可業者へ依頼 | ||
・通信機器 ・AV機器 ・デジタル家電 ・暖房機器 ・電気式おもちゃ 等 ※一部業務用は対象外 | 小型家電リサイクル法 | 家庭で使用 ・自治体の指定方法で廃棄 |
事業所で使用 ・指定取引場所へ持ち込み ・産業廃棄物として処理 | ||
・マッサージチェア ・家庭用光発電装置 ・医療機器 等 | 家庭で使用 ・大型ごみ(粗大ごみ)で廃棄 | |
事業所で使用 ・産業廃棄物として処理 |
参考:環境省/小型家電リサイクル法ガイドブック(排出事業者向け)
家電製品を廃棄する際は、罰則が定められている家電リサイクル法に注意しなければなりません。続いて、家電リサイクル法について掘り下げて解説します。
家電リサイクル法と廃棄方法
家電リサイクル法は、正式名を「特定家庭用機器再商品化法」といいます。廃棄物を減らして地球環境を守ったり、限りある資源を有効活用したりすることを目的として、2001年4月に施行されました。対象となる家電製品は、家電4品目とも呼ばれているテレビ・エアコン・冷蔵庫・洗濯機の4つです。ただし、家電4品目の全てが家電リサイクル法の対象となるわけではありません。種類や使用場所によって対象であるかどうかが異なるため、以下の表を参考に区別するとよいです。
種類や使用場所 | 家電リサイクル法 |
家庭用 | 対象 |
業務用 | 対象外 |
家庭用を事業所で使用 | 対象 |
業務用を家庭で使用 | 対象 |
参考:一般社団法人家電製品協会/対象廃棄物(家電4品目)一覧
業務用を事業所で使用する場合は、家電リサイクル法の対象外です。産業廃棄物扱いとなるため注意しましょう。
家電リサイクル法に基づいた廃棄方法
家電リサイクル法の対象である家電4品目を廃棄する場合は、以下のいずれかの方法で廃棄します。
・新しい製品を購入する小売業者へ引き取りを依頼する
・購入した小売業者へ引き取りを依頼する
・廃棄物収集運搬業許可業者に委託して指定取引場所へ運搬する
・一般廃棄物収集運搬許可業者に委託して指定取引場所へ運搬する
・消費者自らが指定取引場所へ運搬する
廃棄方法に悩んだ場合、自治体へ相談することもできます。正しく廃棄するためにも、無理に自身で判断しないことが大切です。
家電リサイクル法による義務とは
家電リサイクル法は、有用な部品や材料をリサイクルしたり廃棄量を減量させたりするために制定された法律です。また、生活環境の保全と国民経済の発展のために以下を防止する目的もあります。
・無許可業者による不法投棄、不適切管理、不適切処理の防止
・海外への不適正輸出の防止
・無許可業者とのトラブル防止
家電リサイクル法で注意すべきは、消費者・小売業者・製造業者にそれぞれ役割が割り当てられている点です。とくに小売業者や製造業者は、適切な処理・手続きを行うことが求められており、場合によっては罰則が科されます。それぞれの役割を理解したうえで、適切に廃棄処理を行いましょう。
家電リサイクル法における消費者の役割
消費者には、家電4品目のリサイクル料金を負担する役割と適正な引き渡しを行う役割が割り当てられています。廃棄する際に支払う金額内訳は、収集運搬料金とリサイクル料金です。消費者はリサイクルの費用を負担することで、循環型社会の形成の一翼を担っています。
家電リサイクル法における小売業者の役割
小売店は引取義務が課されています。消費者の依頼によって引き取った家電4品目は、以下のいずれかの方法で製造業者、もしくは認定業者へ引き渡さなければなりません。
・自らが運搬(運搬に関する資格は不要)
・収集運搬に関する資格を取得している外部業者へ運搬を依頼
消費者から廃家電製品を引き取る際は「家電リサイクル券」を発行し、写しを消費者に交付する必要があります。
家電リサイクル法における製造業者の役割
製造業者には、再商品化等義務が課されています。小売店から家電4品目を引き取り、再商品化もしくは熱回収によってリサイクルを行う義務です。小売店から直接的に廃家電製品を引き取るのではなく、指定取引場所へ持ち込まれた廃家電製品を引き取った後、リサイクルを行います。
廃家電を収集運搬する際に必要な資格とは
廃家電製品を収集運搬する場合、廃家電製品の品目や排出先によって必要となる資格が異なります。家電リサイクル法や廃棄物処理法に基づく運搬が求められるため、正しく理解するようにしましょう。
家電リサイクル法の対象品目を収集運搬する場合
家電4品目を回収した小売店自らが収集運搬する場合、特別な資格は必要ありません。一方で、小売店からの委託を受けた外部業者が、家電リサイクル法の対象である家電4品目を収集運搬する場合は、一般廃棄物収集運搬許可もしくは廃棄物収集運搬業許可のいずれかの取得が必要です。本来、産廃業者は家庭からでる廃棄物の収集運搬はできません。しかし、家電リサイクル法を通すことで、産廃業者は家庭からでる廃家電製品を収集運搬することが可能となるのです。
家電リサイクル法の対象外品を収集運搬する場合
家電リサイクル法の対象外となる廃家電製品を収集運搬する際は、以下に応じた資格を取得している必要があります。
・家庭から排出された廃家電:一般廃棄物収集運搬許可
・事業所から排出された廃家電:廃棄物収集運搬業許可
廃家電製品が排出された場所によって、必要となる資格が異なるため注意しましょう。
まとめ
廃家電製品を廃棄したり収集運搬したりする場合、品目や排出場所をふまえたうえで適切な方法を選択する必要があります。廃品であるからといって、産廃業者の管轄だと思い込まないことが大切です。また、家電リサイクル法の対象である家電4品目においては、産業廃棄物収集運搬業許可を取得していれば収集運搬することができます。産廃業者が参入しやすい業界ともいえるため、事業拡大を計画していたり取扱品目の増加を希望したりしている場合にもおすすめです。