産廃業許可が取得できない欠格要件とは?要件ごとに詳しく解説

欠格要件は、産廃業許可を取得するうえで必ずクリアしなければならない問題です。複数ある要件にひとつでも該当してしまうと産廃業許可の取得はできないため、十分に注意する必要があります。とはいえ、言い回しがむずかしいなどを理由に欠格要件を正しく理解できていない人も少なくありません。

そこで今回は、産廃業許可の欠格要件をひとつずつ解説します。あわせて欠格要件の対象者も紹介するため、産廃業の知識を深めたり産廃業許可をスムーズに取得したりするために役立ててください。

目次

産廃業許可における欠格要件とは

欠格要件とは、産業廃棄物収集運搬業や産業廃棄物処理業に関わる事業を適切に行える人物であるかを判断するための条件です。産廃業許可を取得したり産廃業を運営したりするには、欠格要件に該当してはいけません。万一、欠格要件に該当してしまった場合は、以下の状態となる恐れがあります。

・産廃業許可の取得ができない
・取得している産廃業許可が取り消される
・産廃業に関わる営業ができなくなる

欠格要件に該当することは、事業活動に大きな支障をきたすといえます。また、産廃業許可の取得後も欠格要件に該当しないように注意しなければなりません。円滑に事業活動するためにも、欠格要件はしっかりと理解しておきましょう。

欠格要件の対象者

欠格要件は、産廃業を行ってはいけない人物を排除することを目的に設定された要件ともいえます。そのため、事業代表者だけでなく、事業に対して一定の権限をもつ人物も欠格要件に該当してはいけません。以下は、欠格要件に該当してはいけない人物です。

・法人(会社自体)
・役員(代表取締役、取締役、執行役員)
・持ち株比率が全体の5%以上である株主
・相談役、顧問
・個人事業主
・政令使用人

政令使用人とは、本店や支店の店長であり、産業廃棄物の処理運搬に関する契約について締結権限をもつ者を指します。欠格要件の対象者は、産廃業許可を取得する前だけでなく、取得後も欠格要件に該当してはいけないため注意が必要です。

産廃業許可の欠格要件に該当する事項

産廃業許可の欠格要件は、複数の法律が関わっているため複雑です。また、産廃業を運営するうえで必要な事項も含まれています。産廃業に関わるのであれば、正しく理解しておくべきだといえるでしょう。以下は代表的な欠格要件であり、事業を運営するうえでも重要な事項です。

成年被後見人、被保佐人

成年被後見人と被保佐人とは、民法によって以下のように定義された人物を指します。

・成年被後見人:精神上の障害により判断能力を欠くとして、家庭裁判所から後見開始の審判を受けた者(民法第8条)
・被保佐人:精神上の障害により事理を弁識する能力が著しく不十分であると、家庭裁判所で判断された者(民法第11条)

いずれも、精神的・身体的な問題によって正しく円滑な事業運営は難しいと考えられています。そのため、産廃業許可の欠格要件のひとつとされているのです。

参考:e-Gov法令検索/民法第8条、民法第11条

破産者で復権を得ない者

破産者で復権を得ない者とは、破産手続きを開始してから免責許可が確定するまでの期間にある者を指します。ポイントとなるキーワードの意味は以下のとおりです。

・免責許可:裁判所が債務者に対して「債務の支払い能力がない」と判断した際の決定
・復権:破産者に課せられる権利制限が解除され、権利が回復すること

免責許可が下りることで、債務者は債務支払い義務が免除されたうえで復権します。つまり、破産手続きをしたとしても、復権していれば欠格要件には該当しません。自己破産者が産廃業許可を取得したい場合は、免責許可が決定するまで待つとよいでしょう。

ただし、免責許可は必ずしも得られるものではありません。また、自己破産の手続きを開始してから最低でも3か月は時間がかかります。すぐに産廃業許可を取得したい場合などは、とくに注意するとよいです。

禁固刑以上に処された後に執行を終えた、又は執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者

禁錮刑以上とは、禁固刑もしくは懲役刑が該当します。いずれも刑務所に収監される刑罰です。いずれの場合でも、執行を受ける必要がなくなった日から5年経過すれば、欠格要件には該当しません。また、執行猶予付きの判決が言い渡された場合は、執行猶予期間を満了した時点で産廃業許可の取得が可能です。ただし、特定の法令に関しては別の欠格要件に該当します。

特定の法令等に違反し、罰金以上の刑に処された後に執行を終えた、又は執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者

特定の法令に違反して罰金刑・禁固刑・懲役刑のいずれかに科された場合は、欠格要件に該当します。特定の法令として以下があげられ、大きな処罰が科されるケースも多いです。

環境保全に関する法令等暴力防止に関する法令等
・廃棄物処理法 ・浄化槽法 ・大気汚染防止法 ・騒音規制法 ・海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律 ・水質汚濁防止法 ・悪臭防止法 ・振動規制法 ・特定有害廃棄物等の輸出入等の規制に関する法律 ・ダイオキシン類対策特別措置法 ・ポリ塩化ビフェニル廃棄物の適正な処理の推進に関する特別措置法・暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律 ・刑法第204条(障害) ・刑法第206条(現場助勢) ・刑法第208条(暴行) ・刑法第208条の2(凶器準備集合及び結集) ・刑法第222条(脅迫) ・刑法第247条(背任) ・暴力行為等処罰に関する法律

とくに環境保全に関する法令は、産廃業を正しく運営するうえで遵守すべき法令です。また、産廃業許可を取得する際に受講する、公益団体法人日本産業廃棄物処理振興センターが開催する講習会でも学ぶ内容でもあります。定期的に講習会の内容を振り返るなどして、欠格要件に該当しないようにするとよいでしょう。

特定の法令に関しても、執行猶予付きの判決が言い渡された際は、執行猶予期間の満了をもって産廃業許可の取得が可能です。

特定の許可を取り消され、取り消し日から5年を経過しない者

廃棄物処理法に違反したり浄化槽法第41条第2項による取消処分に該当したりして、以下の許可が取り消しされた場合、取消日から5年間は欠格要件に該当します。

・一般廃棄物収集運搬業許可
・一般廃棄物処分業許可
・産業廃棄物収集運搬業許可
・産業廃棄物処分業許可
・特別管理産業廃棄物収集運搬業許可
・特別管理産業廃棄物処分業許可
・浄化槽法による許可

法令に抵触したことで取消処分を受けた場合、「産廃業を適切に行える人物ではない」と判断される要因となり得ます。そのため、産廃業許可の再取得手続きに影響を及ぼす可能性も少なくありません。違反などで取消処分を受けないよう、産廃業に関わる法令は定期的に確認するとよいです。

また、許可証を自主返納した場合は取消処分ではないため欠格要件には該当しません。自主返納に限っては、5年経過を待たずに許可証の再取得が可能です。

取消処分に関わる聴聞から処分を決定するまでの間に許可証の自主返納等を行い、5年を経過しない者

許可証の取消処分が行われるまでの、「処分に対して異議申し立てなどができる聴聞と呼ばれる期間中」に許可証を自主返納する場合に該当する欠格要件です。通常、取消処分によって許可証を失効した場合、5年間は許可証を再取得することができません。一方で、許可証を自主返納した場合は5年を待たずに許可証を再取得することが可能です。つまり、聴聞の期間中に許可証を自主返納することで、再取得が容易となります。適切な処罰を科すために、聴聞中おける許可証の自主返納を欠格要件に定めたといえるでしょう。

また、同じ理由で聴聞中に廃業届を提出してから5年を経過しない者も欠格要件に該当します。

暴力団の関係者

暴力団とは、法律によって「その団体の構成員(その団体の構成団体の構成員を含む)が集団的に、又は常識的に暴力的不法行為等を行うことを助長する恐れがある団体」と定義されています。暴力団の関係者として、欠格要件に該当する者は以下のとおりです。

・暴力団員(暴力団の構成員)
・暴力団を辞めてから5年を経過しない者

また、暴力団員が支配している、もしくは暴力団と関わっている人物が事業運営に関わっている場合、事業がもつ産廃業許可を取り消されたり事業停止が命じられたりします。とはいえ、従業員や役員が暴力団と関係をもっているかどうかの確認は容易ではありません。場合によっては、以下の反社チェックで確認するのもひとつの手だといえます。

・新聞記事のデータベースなど、インターネットで調査する
・信用調査会社や興信所などに調査依頼する
・行政機関に照会したり相談したりする
・契約書にて暴力団との関係を確認したり禁止したりする

各都道府県において、暴力団排除条例が制定されています。産廃業を営む自治体の条例を確認しておくことをおすすめします。

参考:e-Gov法令検索/暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律 第二条第二項

欠格要件に該当してしまった場合に行うこと

欠格要件に該当する人物がでた場合、2週間以内に「欠格要件該当届」を提出する必要があります。とはいえ、提出したからといって産廃業許可の取り消しを免れるわけではありません。基本的には、届け出の事実確認が行われた後に産廃業許可の取消処分が行われます。欠格要件への該当は、事業運営ができない状態になることを理解しておきましょう。

また、「欠格要件該当届」を提出せずに営業を継続してしまった場合、6か月以下の懲役または50万円以下の罰金が科される恐れがあります。懲役や罰金に科された時点で欠格要件に該当するため、届け出の未提出は産廃業許可の取消処分に直結する事項であると考えるとよいです。

欠格要件に該当した人物を「欠格要件対象者」から外す

欠格要件に該当しないように気を付けていても、欠格要件に該当する人物がでてしまう可能性は少なからずあるといえます。万一、欠格要件に該当する人物がでた場合は、欠格要件に該当した人物を「欠格要件の対象者」から外すことで、事業を継続することが可能です。ただし、各自治体に変更届を提出する必要があります。変更届には以下のような届け出期限が設けられているため、早めに提出することが大切です。

・役員の変更:30日以内
・株主の変更:10日以内
・政令使用人の変更:10日以内

自治体によっては変更届の提出に、窓口の予約が必要となるケースもあります。産廃業許可を取得している自治体に確認をとるなどして、正しく対応しましょう。

まとめ

欠格要件に該当することは、産廃業許可を取り消されたり産廃業が運営できなくなったりする事態を引き起こすだけでなく、取引相手からの信頼を失う恐れもあります。また、産廃業許可の取消処分を受けた場合、「産廃業を運営するにあたって不正、又は不誠実な行為をする恐れがあると判断できる理由」とみなされ、許可の再取得がむずかしくなるケースも少なくありません。定期的に欠格要件に該当している者がいないかの確認や、法令と自身の事業内容を照らし合わせるなどして正しい産廃業の運営を心がけましょう。

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